温泉の歴史(古代)※奈良時代~平安時代
2015年12月11日 公開温泉の歴史は、私たち人類の歴史より永いものであると言われております。そもそも温泉は、火山活動などが盛んな地域において、数万年も前から自然に沸き出していたものであると考えられています。
我が国において、最も古い温泉は何処ですか? というお問い合わせを、よくいただきますが、これについては正確には分からないのが現状です。
ただし、地球科学の研究が進歩してきましたので、最近になって温泉がいつ頃からあったのか推定できるようにもなってきたようです。近い将来、各温泉地では温泉がいつ頃からあったのか解明されるようになると思われます。
これから数回にわたって、温泉の歴史について触れてみたいと思います。
今回は古代の温泉について簡単に取り上げてみました。
日本において、歴史的な文献に様々な温泉地が登場しますが、現存最古の歴史書「古事記」や、最初の勅撰の歴史書「日本書紀」、また諸国の地誌にあたる「風土記」にも温泉の記述が見られるものがあります。
これらの歴史的文献に基づいて、「伊予の湯」=愛媛県・道後温泉、「牟婁の湯」=和歌山県・白浜温泉、「有間の湯」=兵庫県・有馬温泉が「日本三古湯」と呼ばれており、天皇の温泉行幸の記述も見られます。また、「出雲国風土記」にも温泉の記述が見られ、島根県・玉造温泉も古い歴史を持っていることが伺えます。この時代の温泉は「神湯」、「薬湯」とも呼ばれており、人々の温泉への畏敬の思いが伺えます。このように、我が国では古代から温泉が利用されていたことが分かります。
奈良時代から平安時代にかけて編纂された現存最古の和歌集「万葉集」にも多くの温泉地が登場します。神奈川県・湯河原温泉や長野県・上山田温泉など、東国の地域の温泉も利用されていることが明らかになっています。
平安時代に編纂された「延喜式」の神名帳には「温泉神社」「湯泉神社」などが記録されているほか、和歌山県・湯峰温泉は、平安時代の熊野詣での際に立ち寄り、温泉に浸かると共に温泉で炊いたお粥を食べて身体の内外から身を清めて参拝したと伝えられています。
古代では、火をおこして水を温めてお湯を沸かすことは大変なことでした。何も手を加えることなく、温かい湯が自然に湧き出してくる温泉は、昔の人々にとって非常にありがたく貴重なものであったと思われます。さらに、温泉には様々な成分が含まれていて、入浴すると病気が良くなったりしたことから、神聖なものとして崇められていました。
世界的に見ますと、古代ギリシャやローマ時代にも温泉が利用されていたことを伺うことができます。特に古代ローマ人の風呂好きは有名で、「ローマ風呂」と称される浴槽の遺跡が数多く残されています。
いずれにしても、温泉は人類の歴史以前から湧いていたものであり、古代人はすでに温泉を利用していたということが分かります。