適応症と禁忌症 | 日本温泉協会

適応症と禁忌症

適応症と禁忌症

2015年12月11日 公開

温泉のうち特に療養に役立つ泉質をもつ温泉は「療養泉」と呼ばれています。療養泉は、温度または主な含有成分の種類と量によって分類されます。また療養泉には、単純温泉や塩化物泉といった泉質名がつけられ、泉質ごとに「適応症」があります。

1.適応症とは

適応症とは、温泉療養を行うことによって効果をあらわす症状のことです。
温泉療養を行うにあたっては、以下の点をよく注意して行う必要があります。

① 温泉療養の効用は、温泉の含有成分などの化学的因子、温熱その他の物理的因子、温泉地の地勢及び気候、利用者の生活リズムの変化その他諸般によって起こる総合作用による心理反応などを含む生体反応であること。
② 温泉療養は、特定の病気を治癒させるよりも、療養を行う人の持つ症状、苦痛を軽減し、健康の回復、増進を図ることで全体的改善効用を得ることを目的とすること。
③ 温泉療養は短期間でも精神的なリフレッシュなど相応の効用が得られるが、十分な効用を得るためには通常2~3週間の療養期間を適当とすること。
④ 適応症でも、その病期又は療養を行う人の状態によっては悪化する場合があるので、温泉療養は専門的知識を有する医師(例えば温泉療法医)による薬物、運動と休養、睡眠、食事などを含む指示、指導のもとに行うことが望ましいこと。
⑤ 適応症については、その効用は総合作用による心理反応などを含む生体反応によるもので、温泉の成分のみによって各温泉の効用を確定することは困難であること。

適応症には、泉質を問わず共通する「一般的適応症」と、泉質によって定められた「泉質別適応症」があります。

①療養泉の一般的適応症(浴用)

筋肉若しくは関節の慢性的な痛み又はこわばり(関節リウマチ、変形性関
節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)、
運動麻痺における筋肉のこわばり、
冷え性、末梢循環障害、
胃腸機能の低下(胃がもたれる、腸にガスがたまるなど)、
軽症高血圧、
耐糖能異常(糖尿病)、
軽い高コレステロール血症、
軽い喘息又は肺気腫、
痔の痛み、
自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)、
病後回復期、
疲労回復、健康増進

②泉質別適応症

掲示用泉質 浴用 飲用
単純温泉 自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
塩化物泉 きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症 萎縮性胃炎、便秘
炭酸水素塩泉 きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症 胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、耐糖能異常(糖尿病)、高尿酸血症(痛風)
硫酸塩泉 塩化物泉に同じ 胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘
二酸化炭素泉 きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症 胃腸機能低下
含鉄泉 鉄欠乏性貧血
酸性泉 アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常(糖尿病)、表皮化膿症
含よう素泉 高コレステロール血症
硫黄泉 アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症(硫化水素型については、末梢循環障害を加える) 耐糖能異常(糖尿病)、高コレステロール血症
放射能泉 高尿酸血症(痛風)、関節リウマチ、強直性脊椎炎など

2.禁忌症とは

禁忌症とは、1回の温泉入浴又は飲用でも身体に悪い影響をきたす可能性がある病気・病態のことです。なお、禁忌症にあたる場合でも、専門的知識を有する医師の指導のもとで温泉療養を行うことはこの限りではありません。

禁忌症には、①温泉の一般的禁忌症、②泉質別禁忌症、③含有成分別禁忌症があります。

①温泉の一般的禁忌症(浴用)

病気の活動期(特に熱のあるとき)、
活動性の結核、進行した悪性腫瘍又は高度の貧血など身体衰弱の著しい場合、
少し動くと息苦しくなるような重い心臓又は肺の病気、むくみのあるような重い腎臓の病気、
消化管出血、目に見える出血があるとき、
慢性の病気の急性増悪期

②泉質別禁忌症

掲示用泉質 浴用 飲用
酸性泉 皮膚又は粘膜の過敏な人、高齢者の皮膚乾燥症
硫黄泉 酸性泉に同じ

③含有成分別禁忌症

成分 浴用 飲用
ナトリウムイオンを含む温泉を1日(1,200/A)×1,000mLを超えて飲用する場合 塩分制限の必要な病態腎不全、心不全、肝硬変、虚血性心疾患、高血圧など)
カリウムイオンを含む温泉を1日(900/A)×1,000mLを超えて飲用する場合 カリウム制限の必要な病態(腎不全、副腎皮質機能低下症)
マグネシウムイオンを含む温泉を1日(300/A)×1,000mLを超えて飲用する場合 下痢、腎不全
よう化物イオンを含む温泉を1日(0.1/A)×1,000mLを超えて飲用する場合 甲状腺機能亢進症

(注)Aは、温泉1 kg 中に含まれる各成分の重量(mg)を指す。

温泉がどのような泉質かを知り、どのような症状に良くて、どのような症状には良くないかを知っておくと、自分にあった温泉を探したい時にも役立ちます。

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