温泉関係施設における硫化水素中毒防止対策の徹底について(厚生労働省より)
2025年3月11日 公開
令和7年2月福島県内の温泉関係施設において、硫化水素中毒が原因と考えられる災害により、3名が死亡するという重大な災害が発生しました。
現在、原因等の詳しい状況については調査中ですが、過去においても温泉関係施設における硫化水素中毒による災害が発生しております。
ついては、過去の硫化水素中毒災害の発生状況も踏まえ、同様の作業を行う場合は、改めて、下記事項に留意し、作業者の安全を確保するようお願いいたします。
記
1 事業者は、硫黄泉等の硫化水素を含む温泉の温泉関係施設において、温泉の貯湯タンク内の清掃や、源泉からの送湯管内の空気抜きの作業等、高濃度の硫化水素が生じるおそれがある場所における作業を行うに当たっては、以下の事項を行うこと。
(1)作業を行う前に作業場所の硫化水素濃度を測定し、その濃度が10ppmを超える場合は、10ppm以下になるよう換気すること。換気を行うことが困難である場合は、作業者に呼吸用保護具を使用させること。なお、硫化水素濃度を測定する際には、高濃度の硫化水素が発生している可能性もあるため、呼吸用保護具を着用した上で測定する、離れた場所から測定器を近づける等、十分に注意すること。
(2)作業が終了するまでの間は、硫化水素濃度が10ppm以下になるよう換気を行うこと。
(3)硫化水素濃度が10ppmを超える場所で作業を行わせる場合は、作業者に呼吸用保護具を使用させることはもとより、作業者以外が立ち入ることがないよう、立入禁止の表示を見やすい箇所に行い、関係者以外の立入を禁止すること。
なお、未使用の吸収缶の保存に当たっては保存期限に留意すること。硫化水素が高濃度の場合、吸収缶の破過時間が著しく短くなることに留意すること。
(4)硫化水素は空気より重く、窪みに溜まりやすい。積雪の多い地域においては、雪穴やくぼ地に硫化水素の拡散が妨げられ、高濃度の硫化水素が滞留する可能性もある。そのため、特に温泉施設の管等を雪から掘り出す等の作業時においては、安全な経路の確認、硫化水素濃度の測定頻度、呼吸用保護具の着用、換気の方法、役割分担を定めた複数人での対応、救急時の対応等をあらかじめ検討の上、計画的な作業に努めること。
特に、硫化水素は濃度によっては、リスクがあっても刺激臭を知覚できないおそれがあることから、屋外であっても、濃度測定は強く推奨されること。
2 安全衛生教育の実施
事業者は、事前に作業の手順及び緊急時の救助方法等について作業標準を定め、関係労働者に教育すること。
近年における温泉関係施設での硫化水素中毒の事例
災害発生場所 | 災害労働者数(人) | 災害概要 | |
死亡 | 休業 | ||
温泉供給設備 | 3※ | 0 |
温泉供給設備の空気抜き作業を行うため、雪を約2m掘り、空気抜き弁設置箇所と思われる2名で作業をしていたところ硫化水素ガスにばく露し、その後救助作業を行った1名も被災したもの。 |
温泉槽の内部 |
0 |
3 |
温泉槽の清掃のため、梯子を使ってタンク内の一番下まで降りたが、タンクが暑いため戻る途中で梯子を踏み外して落下した。気分が悪く助けを求めたが、内部に助けに入った作業員1名と、タンクの開口部で送風機を持ち内部に送風していた作業員1名も気分が悪くなり救急搬送されたもの。 |
温泉施設近くの雪上 | 0 | 1 |
火山において、温泉供給のための機械の設置や除雪作業を行っていたところ、硫化水素を含む火山ガスを吸い込み被災したもの。 |
温泉用ポンプの周辺 | 0 | 1 |
被災者は温泉用ポンプの保守管理業務に従事していた。業務終了後に吐き気等の自覚症状があり、救急車で搬送されたところ、硫化水素中毒と診断を受けた。 |
給水タンクの内部 | 0 | 1 |
温泉の給水タンク補修のためタンク内へ入ったところ、泉源から発生した硫化水素が排水管からタンクへ逆流し滞留していたため硫化水素に暴露し、休業したもの。 |
※労働者以外の者を含む(厚生労働省労働衛生課調べ)