温泉の色
2020年2月21日 公開
温泉の色ついて
これら「温泉の色」は、成分(特に水に溶けない不溶性化学成分)が大きな要因であると考えられています。地中から湧出した温泉が空気に触れて成分が化学変化していくことによって色が変化したり、光の反射や屈折、吸収、湿度等によって変色して見えたり、成分の細かい粒子が温泉水中を浮遊していることによって色づいて見えるなど、いくつかの理由が明らかになっています。
温泉の色の分類
①白色系(乳白色・灰白色・黄白色)
温泉の色で最もポピュラーなのは、乳白色や黄白色など白濁した温泉かと思われます。白濁して見える温泉は、硫黄泉中に含まれる硫化水素が酸化する過程で生成された硫黄化合物が要因となっていると考えられています。細かい硫黄化合物の粒子が温泉水中を浮遊しているため白濁して見え、特に酸性が強く硫化水素の濃度が高いほど濁りが発生しやすいようです。白色系の温泉は比較的多く存在し、北海道ニセコ温泉郷(ニセコ湯本)、青森県酸ヶ湯温泉、秋田県乳頭温泉郷(鶴の湯・黒湯)、福島県高湯温泉、栃木県那須湯本温泉、群馬県万座温泉・草津温泉の一部、神奈川県箱根温泉郷(仙石原・強羅)、長野県白骨温泉、大分県別府温泉郷(明礬温泉)など、全国的に見ることができます。 また、泥や粘士質が含まれている場合にも、乳白色~灰白色の色が見られます。例として秋田県八幡平温泉郷の後生掛温泉にある「ぼっけ」と呼ばれる泥火山、大分県別府温泉郷の坊主地獄や熊本県地獄温泉などがあげられます。
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②青色系(水色・青白色)
青色系の温泉は、澄んだ青色から薄い水色、また青白色の濁った色があります。澄んだ青色や薄い水色のものは、メタ珪酸(シリ力)の含有量が多い高温の温泉で見ることができ、光の反射等で色あいが変化するようです。青白色で濁りがあるものは硫黄化合物と光の反射等に起因すると考えられています。
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③赤色系(赤色・赤褐色)
赤色系の温泉は、鮮やかな赤色に見えるものから、赤褐色やオレンジ色のような色あいがあります。鉄分を含んだ温泉が空気に触れると酸化がはじまり、水酸化第二鉄に変化して赤褐色の沈殿物が生じます。湧出時は無色透明に近く、時間が経過すると赤色や赤褐色に変色します。微弱酸性から中性、アルカリ性の温泉ではこの現象が見られることが多く、酸性が強いと鉄の沈殿は起こらないそうです。鉄分に加え、塩分や炭酸を含んだ温泉に多く見られます。赤色系で有名な温泉は、兵庫県の有馬温泉があげられ「金泉」とも呼ばれています。また別府温泉郷の「血の池地獄」では鮮やかな赤色となっています。
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④緑色系(緑色・黄緑色)
緑色系の温泉は、透明度の高い澄んだ緑色から黄緑色、不透明な緑褐色などあります。酸性鉄泉は旧泉質名を「酸性緑ばん泉」といい、透明度のある淡い緑色をしているようです。また、中性からアルカリ性の硫黄泉で硫化水素を含むものは黄緑色になる場合があるようです。緑色系で有名な温泉は、岩手県国見温泉や新潟県月岡温泉、宮城県鳴子温泉郷の川渡温泉、長野県熊の湯温泉などがあげられます。
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⑤褐色系(黒褐色・茶褐色)
褐色系の温泉は、黒褐色または茶褐色をしコーラやコーヒーのような濃い色調で不透明なものから、薄茶色で透明度があるものもあります。黒色、黒褐色、茶褐色の温泉は、フミン酸やフルボ酸などの腐植質が含まれ、この濃度が濃いとより黒く、薄いと褐色や薄茶色に見えるといわれています。腐植質とは古い時代のシダ植物や海藻類が地中で分解されてできた有機化合物です。このタイプの温泉は、湧出した時から色づいている場合が多く北海道十勝川温泉、帯広周辺の温泉、東京23区内の温泉、神奈川県の平野部の温泉、甲府盆地の温泉等に見られます。
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⑥その他の色
その他に黄褐色や緑褐色、薄い黄色などの温泉があげられます。黄褐色や緑褐色は、先に述べた緑色系に見える温泉の成分に加え、鉄や硫黄などが関係していると考えられています。黄褐色の温泉は、北海道のニセコ昆布温泉の一部や青森県の黄金崎不老ふ死温泉などがあげられます。緑褐色で不透明な温泉は、栃木県の塩原温泉郷元湯や岐阜県の濁河温泉などで見られます。薄い黄色の温泉は、温泉分析書の知覚的試験の項目に「淡黄色」という記載を見かけます。これは硫黄が含まれている温泉に多いようです。
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